自己効力感とは?3つの種類と高める方法【子ども・大人・医療現場別に解説】

自己効力感とは?3つの種類と高める方法【子ども・大人・医療現場別に解説】 心の仕組み

「どうせ自分にはできない」
「失敗したらどうしよう」

そんな気持ちに支配されて、新しいことへの一歩が踏み出せなくなっていませんか?

あるいは、お子さんが何かに挑戦する前から「無理」と諦めてしまう姿を見て、心配になったことはないでしょうか。

実は、こうした「できるかもしれない」と思える感覚には、自己効力感という心理学的な裏付けがあります。

自己効力感とは、「自分ならできる」「やってみよう」と思える心の力のこと。
この感覚は、生まれつきの才能ではなく、経験によって育てることができるものです。

この記事では、自己効力感の3つの種類と、それぞれの育て方について、子ども・大人・医療現場という異なる視点からわかりやすく解説していきます。

自己効力感は3つに分けて考えられることが多い

心理学や教育分野では、自己効力感は文脈ごとに次のように整理されることがあります。

① 自己統制的自己効力感

自分の感情や行動をコントロールできるという感覚
(自己管理・粘り強さ・回復力)

② 社会的自己効力感

対人関係において「自分ならうまく関われる」と信じる感覚
(コミュニケーション・共感・協調)

③ 学業的自己効力感

学習や勉強において「努力すれば達成できる」と思える感覚
(学習意欲・継続力・リスキリング)

※これらは独立しているというより、相互に影響し合う関係にあります。

自己統制的自己効力感とは何か

自己統制的自己効力感
(じことうせいてき・じここうりょくかん/Self-regulatory self-efficacy)とは、
自分の行動や感情を自分でコントロールし、目標に向かって適切に行動できると信じる感覚のことです。

困難な状況に置かれても感情に流されすぎず、計画を立てて行動し、失敗しても立ち直って再挑戦できる――
そうした「自分ならやり続けられる」という信念を指します。

アルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」を、
自己管理・自己制御の側面に特化して捉えた概念が、自己統制的自己効力感です。

成長し続ける力(チャレンジ精神)につながり、自分の行動が結果に結びつくと信じられるため、長期的な目標に対してもモチベーションを高く維持しやすくなります。

自己統制的自己効力感の具体例

感情のコントロール

  • ストレスの高い場面でも冷静さを保てる
  • 不安や怒りに飲み込まれず、次の行動を選べる

行動の制御(自己管理)

  • 誘惑に負けず、健康的な習慣を続けられる
  • タスクを計画的に進め、途中で投げ出しにくい

困難への前向きな対応

  • 初めての仕事や難しい課題にも「やってみよう」と挑戦できる
  • 失敗を「能力不足」ではなく「改善材料」と捉えられる

失敗からの回復

  • うまくいかなくても諦めず、試行錯誤を続けられる
  • 「次はこうしよう」と再挑戦できる

なぜ自己統制的自己効力感が重要なのか

目標達成につながりやすい

自己統制的自己効力感が高い人は、
長期的な目標や複雑なプロジェクトでも行動を継続しやすく、結果を出しやすい傾向があります。

レジリエンス(回復力)が高まる

失敗や挫折を経験しても、
「自分なら立て直せる」という感覚があるため、立ち直りが早くなります。

自己成長の土台になる

自分の行動を肯定的に捉えられるため、
学習・スキル習得・行動改善を継続しやすくなります。

社会的自己効力感とは

社会的自己効力感とは、
「自分なら他人と良い人間関係を築ける」「対人場面でも対処できる」と信じる感覚です。

この感覚が高い人は、

  • 共感力が高く
  • 積極的にコミュニケーションを取り
  • 人間関係のトラブルにも前向きに対処しようとする

傾向があります。

幼少期から児童期にかけて形成されやすく、
一度培われると、大人になってからの対人関係にも影響し続けます。

学業的自己効力感とは

学業的自己効力感
(Academic self-efficacy)とは、
学習や勉強の場面で「自分ならやり遂げられる」と信じる感覚です。

この感覚が高い人は、

  • 難しい課題にも粘り強く取り組み
  • 工夫しながら学習を続け
  • 成績や達成につながりやすい

という特徴があります。

これは学生だけでなく、
社会人のリスキリングや生涯学習にも重要な心理的基盤です。

自己効力感を高める基本的な方法(共通)

バンデューラは、自己効力感は次の4つから育つと述べています。

  • 小さな成功体験を積み重ねる
  • 身近な他者の成功を見る(代理経験)
  • 周囲からの肯定的な言葉(言語的説得)
  • 心身の状態を整える(過度な不安を避ける)

自己効力感は才能ではなく、
経験によって育つ「感覚」です。

【子ども向け】自己効力感ってなに?

〜「やってみよう」と思える心を育てる力〜

自己効力感とは、
「自分ならできるかもしれない」「ちょっとやってみよう」と思える気持ちのことです。

たとえ最初はうまくいかなくても、
「もう一回やってみよう」「次はできるかも」
と思える力が、自己効力感です。

子どもにとって大切なポイント

  • 失敗してもすぐにあきらめない
  • できない時も「練習すればできる」と考えられる
  • 少し前に進めたことを自分で感じられる

自己効力感が育つとどうなる?

  • 勉強や運動にチャレンジしやすくなる
  • 「どうせ無理」が減る
  • できた時の喜びを感じやすくなる

自己効力感は、ほめすぎなくても育ちます
「前よりよくなったね」「ここまでできたね」
そんな声かけが、子どもの「できるかも」を支えます。

【大人向け】自己統制的自己効力感とは

〜感情や行動をコントロールできるという自信〜

自己統制的自己効力感とは、
自分の感情や行動をコントロールし、目標に向かって行動し続けられると信じる感覚です。

仕事や生活の中では、

  • モチベーションが下がる
  • 失敗して落ち込む
  • ストレスで判断が鈍る

といった場面が必ずあります。

その中で
「それでも自分なら立て直せる」
「感情に流されず、次の一手を選べる」
と感じられることが、自己統制的自己効力感です。

高い人の特徴

  • 誘惑や不安に振り回されにくい
  • 失敗を引きずりすぎない
  • 小さな改善を積み重ねられる

これは根性論ではなく、
小さな成功体験と振り返りの積み重ねで育ちます。

【医療・リハビリ向け】自己効力感と回復の関係

〜「自分にもできる」が回復を支える〜

医療やリハビリの現場では、
自己効力感は回復意欲や継続行動に深く関わる心理的要因とされています。

自己効力感がある患者さんは、

  • リハビリを途中で投げ出しにくい
  • 痛みや不安があっても挑戦し続けやすい
  • 小さな回復を前向きに捉えられる

特に重要なのが「近いモデル」

  • 同じような症状の人が回復している
  • 少し先を行く患者さんの姿を見る

こうした経験は、
「自分にもできるかもしれない」という現実的な希望を生みます。

支援者側のポイント

  • 結果よりも「できるようになった過程」を共有する
  • 小さな達成を言葉で確認する
  • 比較ではなく“前回の自分”との変化を示す

自己効力感は、治療効果そのものではありませんが、
治療を続ける力を支える重要な土台です。

まとめ(共通)

  • 子どもには「できた経験」を
  • 大人には「立て直せた経験」を
  • 医療現場では「続けられた経験」を

それぞれ意識的に積み重ねることで、自己効力感は育ちます。

自己効力感は才能ではなく、
経験によって育つ“感覚”です。

あとがき

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

自己効力感という言葉は、一見難しく感じるかもしれませんが、実は私たちの日常の中に溢れている「ちょっとした前進」の積み重ねから生まれるものです。

子どもが「できた!」と目を輝かせる瞬間。
大人が困難を乗り越えて「やり遂げた」と感じる達成感。
医療の現場で「少しずつ良くなっている」と実感できる回復のプロセス。

これらはすべて、自己効力感を育む貴重な経験です。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、小さな一歩を認めること

「前よりできるようになった」
「今日はここまでやれた」
「失敗したけど、次はこうしてみよう」

そんな声かけや振り返りが、自分自身や周りの人の「できるかも」という感覚を支えていきます。

この記事が、あなた自身や大切な人の自己効力感を育むヒントになれば幸いです。

どうか焦らず、一歩ずつ。

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。

 

コメント