クリスマスの記憶 -短いエッセイ-

クリスマスの記憶 -短いエッセイ- エッセイ

街の華やかなイルミネーションではなく、

家の中で繰り返される小さな儀式にこそ、本当のクリスマスがある。

 

箱から出すツリー、特別に感じたコロッケ。

豪華ではないけれど、確かな居場所の記憶を綴ったエッセイ。

 

街のイルミネーションから家の中への転換を描き、

「繰り返される小さな儀式」という本文のテーマを導入しています。

家のなかの小さな儀式

 

街は華やかなイルミネーションで溢れている。

けれど、本当にクリスマスを感じるのは、家のなかに入った瞬間だった。

 

玄関を開けると、そこにはいつもと違う空気がある。

それは、派手な飾りや高価な料理によって作られるものではない。

 

毎年繰り返される小さな儀式が、静かに積み重なってできた、家族だけの時間の感触だった。

 

家の中では、クリスマスツリーが静かに空気を変えていた。

 

年に一度、箱からツリーを出し、飾り付けをする。

その瞬間から、部屋は別の時間に入る。

 

クリスマスの空気や、サンタさんの神聖さは、

ツリーと、その下に置かれるプレゼントに宿っていた。

 

料理は肉料理のディナーだった。

けれど私は、ハンバーグよりもコロッケの方に、なぜか特別な感じを覚えていた。

 

それは、たぶん好みの問題なのだろう。

 

外の遠くの灯りと、内側のツリーとコロッケ。

どちらも、豪華ではない。

 

でも、そこには確かな居場所の記憶がある。

 

今、あのころの自分に会いに行くことはできない。

けれど箱からツリーを出すたび、あの空気が、少しだけ戻ってくる気がする。

 

クリスマスとは、そういうものなのかもしれない。

あとがき

「外の遠くの灯り」と「内側のツリーとコロッケ」を対比させながら、

記憶と現在をつなぐ余韻を残しました。

 

派手な飾りではなく、毎年繰り返される家族の小さな儀式が作り出す、特別な空気感について、

時間の経過と、それでも戻ってくる感覚を静かに綴っています。

 

全体として、派手さではなく「繰り返される家庭の儀式」という一貫した視線を保ちつつ、

記憶の温度が伝わるエッセイになったと思います。

 

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。

 

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