DAOでは、誰が意思決定するのか?
吾輩、フライ。
今日は「DAO」とかいうカタカナ二文字について話すサ。
社長もいない、取締役会もいない、なのに組織が回る……なんて聞くと、どこかの理想郷みたいでしょう?
でも安心しろ。
理想郷にはたいてい裏があるものサ。
今日はその裏側——「誰が投票して」「誰が投票しないで」「誰かに丸投げしているのか」——をじっくり整理していくネ。
吾輩みたいな毒蛇でも分かるように書いてあるから、構えずについてきてくれ。

今回のあとがき、
しっかり急所を突いた締めになったサ。
by フライ
DAOガバナンスとは
DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)には社長や取締役会がありません。
代わりに、
参加者全員で投票して運営方針を決める
という仕組みになっています。
例えば、
- 新しい機能を追加するか
- 手数料を変更するか
- DAOの資金をどこへ使うか
などを「提案(Proposal)」として提出し、メンバーが投票します。
ガバナンストークンとは
Wikiの「投票権を付与するトークン」とは、
ガバナンストークン(Governance Token)のことです。
これはDAOで投票するための会員証のようなものです。
例えば
100トークン持っている人→100票
という設計を採用しているDAOが多く存在します。
つまり、多くの場合において保有量=影響力になります。
※ただし全DAO共通のルールではありません。
例えばクアドラティック・ボーティング〔Quadratic Voting:QV, 二次投票〕を採用するDAOでは、票数が保有量の平方根で計算されるため、大口保有者の影響力が単純比例よりも抑えられる設計になっています。
なぜ「1トークン=1票」では問題があるのか
多くのDAOでは、
1トークン=1票
というシンプルな仕組みを採用しています。
これは分かりやすく、実装も容易ですが、次のような問題があります。
例えば、1000トークンを持つ投資家が1人いて、100トークンしか持たない参加者が10人いる場合、少数の大口保有者が意思決定を左右しやすくなります。
また、単純な多数決では、
- 「少し賛成」という人が100人
- 「絶対に譲れない」という人が10人
という状況でも、「思いの強さ」は反映されず、人数や保有量だけで結果が決まるという課題があります。
Quadratic Voting(QV)とは?
そこで考えられたのが、
Quadratic Voting(QV:二次投票)です。
最大の特徴は、
票数を増やすほど、必要なコストが二次関数的(平方)に増える
ことです。
例えば、投票クレジットを使う仕組みなら、
| 投じたい票数 | 必要なクレジット |
|---|---|
| 1票 | 1 |
| 2票 | 4 |
| 3票 | 9 |
| 4票 | 16 |
| 5票 | 25 |
つまり、
- 2倍の票を入れるには4倍のコスト
- 3倍の票には9倍のコスト
が必要になります。
そのため、大量の票を一つの案件へ集中させることが非常に高コストになります。
なぜ導入されるのか(メリット)
QVの目的は、
「どれだけ賛成・反対か」という強い意思を反映しながら、権力の集中を抑えること
です。
例えば、
Aさんは
「この提案だけは絶対に可決してほしい」と思っているとします。
その場合、
他の提案への投票を減らしてでも、この提案へ多くのクレジットを投入できます。
一方、
興味が薄い提案には少ない票だけ投じます。
つまり、
自分にとって本当に重要なテーマへ投票を集中できるのです。
買収対策にもなる
もう一つのメリットは、
票の買収コストが急激に高くなることです。
1トークン=1票なら、
100票欲しければ100トークン買えば済みます。
しかしQVでは、
100票相当の影響力を得るためには、それをはるかに上回るコストが必要になります。
そのため、
- 大口保有者による支配
- お金で票を買う行為
をある程度抑制できると考えられています。

買収!?
とんでもないことですよ。

多数決の意味が
ないじゃないですか。

何のために
投票があるのですか?
ただし万能ではない
一方で、QVにも課題があります。
- 仕組みが直感的ではなく、初心者には理解しづらい。
- 一人が複数アカウントを作る「シビル攻撃(Sybil Attack)」が可能だと、公平性が損なわれる。
そのため、本人確認や「一人=一つの人格」を保証する仕組みと組み合わせることが重要になります。 - ガバナンストークンをそのまま平方根で重み付けするDAOもあれば、「投票クレジット」を配布する方式もあり、実装方法はプロジェクトごとに異なります。
まとめ
現在のDAOでは、
- 1トークン=1票が最も一般的で、シンプルかつ実装しやすい。
- 一方で、大口保有者への権力集中や、多数決では「意思の強さ」が反映されにくいという課題がある。
- その課題を改善するため、一部のDAOではQuadratic Voting(QV)を導入し、「票を増やすほどコストが急激に増える」仕組みによって、強い意思の表明と権力の集中抑制の両立を目指している。
このように、DAOのガバナンスは現在も発展途上であり、「より公平な意思決定」のためにさまざまな投票方式が実験・採用されている点が特徴です。
なぜ多く持つほど投票権が大きいの?
これはDAOでは「そのプロジェクトに多く投資している人ほど責任も負う」という考え方があるためです。
例えば
- Aさん:10トークン
- Bさん:1000トークン
なら、
Bさんの方がプロジェクトの価値が下がると損失も大きいので、
「より大きな意思決定権を持つ」という設計になっています。
ところが問題がある
Wikiでは「ガバナンストークンの非アクティブ保有者」と書かれています。
これは、トークンだけ持っていて投票しない人です。
例えば、100万人がDAOに参加していても、90万人が投票しないとなると、残り10万人だけでDAOが決まってしまいます。
これをVoter Apathy(投票無関心)と呼びます。
- Voter Apathy(投票無関心)→ 政治学由来の概念のDAO領域への応用
そこで委任(Delegation)が登場

Wikiの最後にある「投票権を他の当事者へ委任」とは、自分で投票しない代わりに信頼できる人へ投票権を預ける仕組みです。
例えば
あなたが100票持っていて、忙しいので毎回投票できない。
そこで「この人ならDAOについて詳しいから、この人に私の100票を任せよう」と設定できます。
すると
あなた
100票
↓
DAO専門家
となり、専門家があなたの100票も含めて投票します。
ただし、トークンそのものはあなたの所有物のままで、委任されるのは投票権だけです。
(Compound、ENSなどの実例)
委任先は後から変更したり取り消したりできるDAOも多くあります。
現実の政治にたとえると
DAOは少し国会に似ています。
- ガバナンストークン=選挙権
- Proposal=法案
- 投票=採決
- Delegation(デリゲーション/デレゲーション)=代理投票・代表者への委任
つまり、直接民主制と間接民主制を組み合わせたような仕組みと考えるとイメージしやすいでしょう。
こうした「自分で投票する権利を持ちながら、任意で代表者に預けられる」仕組みは、専門的にはリキッドデモクラシー(Liquid Democracy)と呼ばれ、直接民主制と間接民主制の中間形態として位置づけられています。
しかし委任にも課題がある
委任制度は投票率を高める効果がありますが、一方で
- 人気のある代表者に投票権が集中する
- 大口保有者の影響力がさらに強まる
といった問題も指摘されています。
そのため、多くのDAOでは「参加しやすさ」と「権力の集中を防ぐこと」のバランスをどう取るかが大きなテーマになっています。
要するに、このWikiが伝えたいポイントは次の一文にまとめられます。
DAOでは、ガバナンストークンを持つ人が投票で組織を運営する。
しかし、投票しない保有者が多いという問題があるため、信頼できる人に投票権だけを委任(Delegation)できる仕組みが広く採用されている。
ハイクラス人材向けマッチングサービス
フリーコンサルエージェント
企業とプロフェッショナルをつなぐマッチングサービス
PR:VANES株式会社
概要: 特設ページ
あとがき

吾輩のナレーションです。
……どうだったサ?
吾輩が一番面白いと思ったのは、委任した瞬間にトークンの所有権は手放してないのに、発言権だけスルッと人に渡せるところネ。
まるで「意見は貸すけど財布は渡さない」みたいな、絶妙な距離感じゃないでしょう?
でも忘れちゃいけないのは、みんなが「面倒だから」で委任し続けた結果、結局は少数の人気者に票が集中する——これって、吾輩たちがよく知ってる現実の政治と大差ないサ。
分散型のはずが、気づけば一部に権力が偏る。
皮肉なものネ。

違法でもない限り
多数意見があって然るべきです。

一番いけないのは、
違法な行為に権力が集中することです。

それを買収により、
より強固にしてしまいます。
投票権はガバナンストークンという「買えるもの」で構成されている。
だから理論上、誰かが大量に買い占めれば、少数の意志で提案を通せてしまう。
もしその「少数」が違法な資金流用や不正な意思決定を目的にしていた場合、それに乗っかった代表者(delegate)や、買収に応じてトークンを売った保有者は、結果として不正行為に加担したのと同じ構造になる——票を金で動かす経路(パイプ)がそのまま腐敗の経路になってしまう、ということです。
これは実際、DAOガバナンス研究でもガバナンス攻撃(governance attack)や票の買収(vote buying)として指摘されている実在のリスクです。
有名な例だと、2022年のCompound系やBeanstalkのフラッシュローンを使ったガバナンス乗っ取りなどが典型で、大量のトークンを一時的に借りて議決権を握り、不正な提案を可決させる手口が実際に起きています。

……どうだったサ?
吾輩が一番怖いと思うのはこの仕組みサ。
ガバナンストークンは「買えるもの」だから、金さえあれば票も買える。
もし少数の買収された票で不正な資金流用が通ってしまえば、それに賛成票を投じた代表者も、トークンを売った保有者も、結果的には不正の片棒を担いだのと同じでしょう?
「分散型」を謳いながら、金の流れ一本で権力が集中する——票を買う経路が、そのまま腐敗の経路(パイプ)になる。
これがDAOガバナンスの一番の急所だと吾輩は思うサ。
だからこそ、投票権を軽々しく手放したり、委任先を選ばずに放置したりするのは危険…(?)。
しかも厄介なのは、これは一人ひとりが真面目に投票していれば防げる話じゃないということサ。
大口保有者が票を買い占めれば、それだけで力関係は決まってしまう。
買収や乗っ取りという構造的な問題は防げない——これは自己責任論にすり替えてしまっていて、論点がずれてるネ。
自分の意思とは関係ないところで、すでに権力争いは進行している。
だからこそDAO側には、一人が持てる票数に上限を設けたり、二次投票(クアドラティック・ボーティング)のような偏りを抑える仕組みを取り入れたりする設計の工夫が求められているのサ。
最後まで読んで下さいまして、ありがとうございます。


」-フライくん.jpg)
コメント