DAOの弱点を解説|The DAO事件・ハードフォーク・乗っ取りリスク
「DAOは中央管理者がいないから安全」という誤解
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、「人ではなくプログラムによって運営される組織」として注目されています。
しかし、DAOには従来の会社にはない独特のセキュリティ上の課題があります。
実際、DAO史上最大級の事件であるThe DAO事件(2016年)では、約5000万ドル相当のETHが流出し、イーサリアム(Ethereum)の歴史そのものを変える出来事となりました。
この記事では、DAOのセキュリティについて分かりやすく解説します。
DAOは「一度動き始めると修正しにくい」
通常のWebサービスでは、
- バグが見つかった
- プログラムを修正する
- サーバーへアップロードする
だけで修正できます。
しかしDAOは違います。
DAOのルールはスマートコントラクトとしてブロックチェーン上に記録されています。
一度デプロイ(公開)すると、コードを書き換える・データを書き換える・強制的に修正することが非常に困難になります。
これは改ざん耐性という大きなメリットである一方、「バグも簡単には直せない」というデメリットにもなります。
※スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、あらかじめ設定された条件(if-then)が満たされると、ブロックチェーン上で契約(取引や処理)が自動的に実行される仕組みです。
銀行や仲介者などの第三者が不要になるため、手続きの効率化やコスト削減、不正防止に役立ちます。
バグ修正にはコミュニティ全体の合意が必要
DAOには社長もシステム管理者もいません。
そのため、「このバグを修正します」と一人が決めても変更できません。
一般的には
- 新しいスマートコントラクトを作る
- コミュニティで投票する
- 全員が資金を新しいDAOへ移動する
という手順になります。
つまり、小さな修正でも大規模な合意形成が必要になります。
コードは公開されているが、安全とは限らない
DAOのコードは通常オープンソースです。
誰でも見ることができます。
一見すると、「みんなが監視しているから安全そう」と思えます。
しかし実際には逆の面もあります。
悪意のある攻撃者も同じコードを読めるため、バグ・設計ミス・想定外の処理・を徹底的に調査できます。
もし脆弱性が見つかっても、修正までに時間がかかれば、その間に攻撃される可能性があります。
The DAO事件とは?
DAO史上最大のハッキング事件
2016年、”The DAO”という巨大DAOが誕生しました。
これは当時としては史上最大のクラウドファンディングとなり、
約1億5000万ドル相当のETHを集めました。
しかし、スマートコントラクトの脆弱性を突かれ、約5000万ドル相当のETHが引き出される事件が発生します。
これはブロックチェーン史上でも最も有名な事件の一つです。
イーサリアムはハードフォークを実施
通常、ブロックチェーンは「過去を書き換えられない」ことが特徴です。
しかしThe DAO事件では、被害があまりにも大きかったため、イーサリアムコミュニティは議論を重ねた結果、ブロックチェーンを分岐(ハードフォーク)するという異例の決断を行いました。
これによって、盗まれた資産を元の保有者へ戻しました。
一方で、「ブロックチェーンは変更すべきではない」と考えた人々は元のチェーンを維持し、こちらが現在のEthereum Classic(ETC)となっています。
つまり、The DAO事件はEthereumとEthereum Classicが分かれるきっかけとなった歴史的事件でもあります。
DAOは乗っ取られることもある
DAOでは多くの場合、保有するガバナンストークン数に応じて投票権が決まります。
つまり、大量のトークンを購入できれば、投票を支配できる可能性があります。
これはガバナンス攻撃(Governance Attack)とも呼ばれます。
Build Finance DAO事件
2022年には、Build Finance DAOで実際に乗っ取り事件が起きました。
ある参加者が大量のガバナンストークンを取得し、投票権を掌握しました。
その結果、DAOの資金管理権限を自らに変更する提案を可決させ、DAOが保有していた暗号資産を持ち出しました。
技術的なハッキングではなく、DAOのルールそのものを利用した乗っ取りだった点が大きな特徴です。
DAOのセキュリティ対策
現在では、多くのDAOが次のような対策を採用しています。
- スマートコントラクト監査(Audit)
- バグ報奨金(Bug Bounty)
- マルチシグウォレット
- タイムロック(一定時間後に提案を実行)
- 緊急停止(Emergency Pause)
- 投票権の分散設計
- ガバナンスの多段階承認
こうした仕組みによって、コードの脆弱性だけでなく、ガバナンスの悪用リスクも低減しようとしています。
まとめ
DAOは中央管理者が存在しないため、高い透明性と耐改ざん性を実現できます。
しかし、その一方で、一度公開したコードの修正が難しいことや、スマートコントラクトの脆弱性が重大な被害につながること、さらにはトークン保有者によるガバナンスの乗っ取りといった独自の課題も抱えています。
The DAO事件やBuild Finance DAO事件は、単なるハッキングではなく、「コードがルールである」というDAOの特徴がもたらした出来事でした。
そのため現在では、監査やタイムロック、マルチシグ、緊急停止機能などを組み合わせ、技術面とガバナンス面の両方から安全性を高める設計が重視されています。
DAOは「完全に安全な組織」ではありません。
しかし、その失敗から学びながら進化を続けており、セキュリティと分散性のバランスをどのように取るかが、今後のDAO発展の大きな鍵となるでしょう。
※参考:Wikipedia「Decentralized autonomous organization(分散型自律組織)」の「Security(安全)」
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