フィリップ・ジンバルドーとは?脱個人化の実験と研究の歩みを解説

フィリップ・ジンバルドーとは?脱個人化の実験と研究の歩みを解説 心の仕組み
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脱個人化や集団心理が語られる際、必ずといっていいほど名前が挙がるのが、アメリカの心理学者フィリップ・ジンバルドーです。

本記事は、脱個人化と集団心理を考える全6回シリーズの第4回です。
前回は、脱個人化の源流であるル・ボンの群衆論を読み解きました。

今回は、その考えを実験で検討したジンバルドーの人物像と研究を紹介します。

ジンバルドーとは何者か

Philip George Zimbardo

フィリップ・ジンバルドー(1933〜2024)は、アメリカの社会心理学者です。

ニューヨークのブロンクスで育ち、シチリア系の家庭で初めて大学へ進学しました。
1959年にイェール大学で博士号を取得し、1960年代後半からスタンフォード大学で長く教えました。

人間の行動が、個人の性格だけでなく、置かれた状況や制度によってどう変わるのかを生涯のテーマとしました。

教育者としても知られ、入門講義やテレビ番組、教科書を通じて、多くの学生に心理学の面白さを伝えました。

2024年10月に亡くなった際には、教え子に慕われた教育者として追悼されています。

ジンバルドーの人柄について

  • イェール大学は「教え子に慕われた教育者(beloved educator)」と追悼しています。
  • 英国心理学会(BPS)の追悼文は、エネルギーと知的な熱意、カリスマ性を挙げています。
  • スタンフォードの入門講義は、受講者が多すぎて学部生のTAを入れるほどの人気でした。

 

明るい性格で子供たちに慕われたとか。

若者との関わりなら、晩年のヒロイック・イマジネーション・プロジェクトが、特に若者への教育を重視していました。

脱個人化の実験(1969年)

Zimbardo (1969)

脱個人化の研究者としては、1969年の実験が知られています。

参加者は、大きな白いフードとぶかぶかの実験用白衣を着て匿名性が高い条件と、普段着のまま名札をつけて個人が特定される条件に分けられ、他者に電気ショックを与える(と告げられた)課題に取り組みました。

匿名性の高い条件のほうが、ショックを与える時間が長かったと報告されています。

この結果は、匿名性が攻撃的な行動を促すという、従来の脱個人化理論を支持するものとして紹介されてきました。

ただし、この見方が一般化できるのかは、その後の研究で問い直されることになります。

その内容は、第5回で紹介します。

スタンフォード監獄実験(1971年)

1971年のスタンフォード監獄実験は、ジンバルドーの名を世界に広めた研究です。

研究は2週間の予定でしたが、看守役が囚人役に対して抑圧的な態度を強め、囚人役の一部に強い精神的苦痛が見られたことなどから、6日目に終了しています。

スタンフォード監獄実験については、第1回で詳しく取り上げています。

その後の研究と活動

ジンバルドーの関心は、その後も広がりました。

  • シャイネス(内気):
    1970年代半ば、内気さを「自分で自分を閉じ込める心の牢獄」として捉え、大人の内気さを研究しました。
    内気さに悩む人のためのスタンフォード・シャイネス・クリニックを設立し、治療プログラムを先駆けて開発しました。
    現在はパロアルト大学で運営されています。
  • 時間的展望(タイム・パラドックス):
    人が過去・現在・未来をどう捉えるかを研究し、ジョン・ボイドとともに、それを測る心理尺度ZTPI(ジンバルドー時間的展望尺度、1999年)を開発しました。
    一般向けの著書に『The Time Paradox』(2008年)があります。
  • 『ルシファー・エフェクト』(2007年):
    善良な人が状況や制度の力で悪(sadistic)へ向かうメカニズムを論じた著書です。
    副題は Understanding How Good People Turn Evil です。
  • ヒロイック・イマジネーション・プロジェクト:
    晩年は、いじめや傍観、同調圧力に抵抗し、普通の人が勇気ある行動を起こせるよう、特に若者を対象にした教育活動に力を注ぎました。

悪を生む状況を研究した人物が、晩年には「状況に抗う力」を教える活動へ向かった点は、集団心理を考えるうえでも示唆的です。

次回予告

ジンバルドーの実験は、匿名性が攻撃的な行動を促すという見方を支えてきました。
しかし、その後の研究は、この見方を問い直しています。

次回は、60の研究を検討したメタ分析と、集団の規範に注目するSIDEモデルを紹介します。

参考文献・研究資料

  • Zimbardo, P. G. (1969). The human choice: Individuation, reason, and order versus deindividuation, impulse, and chaos. Nebraska Symposium on Motivation, 17, 237–307.
  • Zimbardo, P. G., & Boyd, J. N. (1999). Putting time in perspective: A valid, reliable individual-differences metric. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1271–1288.
  • Zimbardo, P. (2007). The Lucifer Effect: Understanding How Good People Turn Evil. Random House.

 

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。

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